百日咳
−予防はDPT接種が有効−
こども救急箱(100)
百日咳(ぜき)は文字通り咳が長く続く病気ですが、実際は100日間続くわけではありません。
百日咳菌が主に気道粘膜に飛沫(ひまつ)感染し、1〜2週間の潜伏期のあと、1週間くらい
軽い咳や鼻水などの風邪症状が続きます。その後、コンコンという短い咳が10回以上続き、
苦しくなってヒューという笛のような音で息を吸い込む「せきこみ発作」が現れます。この発作は
繰り返され、顔面が紅潮したりすることもあります。発作は4〜6週間前後続き、その後咳は自然
に治まります。
1歳以下の乳児がこの病気にかかると、呼吸困難や肺炎、脳症、あるいはせきこみ発作による
無呼吸(窒息)などの合併症を起こします。予防には三種混合(DPT)ワクチンが有効で、生後
3か月から受けられます。1歳未満で特に問題となる病気ですから、乳児は3カ月になれば、DPT
ワクチンをすぐに接種すべきです。
百日咳はこれまで、子どもの病気だと思われていました。しかし、小児期にワクチンを接種した
成人でも、年月がたつと免疫が低下し感染してしまうケースがあります。成人の場合、軽い風邪
症状が長引く程度で、感染に気付かないまま生活し、流行を拡大させてしまうことがあります。
大学生の間で集団発生したニュースもその一例です。
成人、あるいは予防接種を受けた兄弟からワクチン未接種の乳児に感染し、重症化してしまう
可能性があります。赤ちゃんへの感染を防ぐには、兄弟がいたら早めに予防接種を受けること、
咳が長引く大人はなるべく近づかないことなどの注意が必要でしょう。成人から、赤ちゃんに
うつさないことが大切です。仮に百日咳にかかっても、三種混合(DPT)の予防接種は通常通り
受けてください。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
山元公恵(鹿児島市医師会病院小児科)
平成22年10月25日 南日本新聞掲載