食べる力を育む
こども救急箱(101)
お子さんは楽しく食事をしていますか。食べるのを嫌ったり、上手に食べられずに困っていま
せんか。食べたり、飲みこんだりするのは何気ないことのようですが、上手に食べられるように
なることは、順調に発育している証しです。
生まれてすぐの赤ちゃんは、誰に教わるでもなく母乳を吸います。これは反射の一つで、お母
さんのおなかにいるころから備わる本能です。一方、食べることは本能でなく、成長に従って段階
的に学習していきます。
食べたり、飲みこんだりする動きは、唇や前歯で食べ物を取りこむ捕食(ほしょく)、奥歯で食べ
物をすりつぶす咀嚼(そしゃく)、舌や口蓋(こうがい)を通してのどや食道に運びこむ嚥下(えんげ)
に分けられます。これらが協調して初めて、上手に食べることができます。
赤ちゃんは生後6か月過ぎから、おかゆのようなドロドロしたものを食べ始めます。前歯が生え
そろう1歳半ごろには離乳が完了し、20本の乳歯が全て生える3歳ごろには、大人とほぼ同じも
のが食べられるようになります。
口から食べ物がこぼれる、丸のみする、むせやすいなど、上手に食べられない原因として
@あごや歯の形の異常
Aおもちゃをなめたり手づかみ食べなど感じながら体を動かす体験の不足
B神経や筋肉の病気
C知的障害
D脳性まひなど体の不自由
E心理的原因
などが挙げられます。うまく食べられない状況が続くと、栄養不良や肥満、肺炎を起こしやすく
なります。改善には、食べ物の硬さ、食事のときの姿勢を考えた検査や訓練が必要な場合が
あり、歯科医師、医師、言語聴覚士、保護者らが協力して支援します。食卓は親子や家族の
コミュニケーションを通じ愛情をはぐくむ場で、楽しい雰囲気作りが大切です。食べ方で悩んだ
ら、子ども専門の歯医者さんに相談してみるといいでしょう。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
佐藤秀夫(鹿児島大学病院小児歯科)
平成22年11月8日 南日本新聞掲載