食べる力を育むA

−成長に合わせた支援を−

 

こども救急箱(102)

食べる力は心身の発達とともに段階的に学習していくことを前回、話しました。体や心の発達に

遅れがあったり、食べ方に問題のあるお子さんには、個々の状況に合った方法で、食べる力の発

達を促す支援が必要になります。 

食べ物を口からこぼしたり、口の奥のほうで取りこむ動きは、唇やあごの協調発達が遅れている

場合にみられます。実際の支援は、食べものを唇でしっかりはさみ、こすり取る動きを介助しながら

練習します。また一口で食べる量を調節し前歯でかみきる練習で、食べ物の硬さや大きさを自覚

できるようにします。丸のみや口の中に食べものがまとまらず残るのは、奥歯を使ったすりつぶし

や舌と口蓋こうがいによる押しつぶしの動きが遅れている場合にみられます。奥歯での咀嚼

そしゃくを促すため、指で左右のほおをさわって声かけするようにします。また、咀嚼途中に飲

み物で流し込まないよう見守りましょう。食べる時の姿勢やテーブルの適切な高さへの配慮も大切

です。

自閉症など発達障害のお子さんは、偏食や拒食がみられることがあります。さらに重度の脳性

まひや低体重出生などで、鼻からチューブを通して栄養を取り、生まれた後に長い間口から食べる

経験のなかったお子さんは口から食べることを拒否したり、意欲がわかないことがあります。これら

の行動に無理な対応を続けると、食事自体が嫌になってしまいます。

食べ方への支援が必要なお子さんには、安全に食べる配慮や体の発達を促す栄養の確保が

求められます。食べる意欲を引き出し、食べ方を通して五感が満たされるのを学び、生涯にわたり

口の健康を保つことでおいしく食べられるよう、保護者や養育関係者が連携して見守り、支援する

ことが大切です。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員 

佐藤秀夫(鹿児島大学病院小児歯科)

平成21年11月29日 南日本新聞掲載