あんしん救急箱・食べる力を育む(3)

 

こども救急箱(103

おいしく食べるには、まず口の中を清潔にし、味がよく感じられるようにすることが大切

です。歯だけでなく、舌や口蓋こうがいも清潔にしましょう。口の中は細菌が住みやすい

環境なので、清掃を怠ると簡単に細菌が増えてしまいます。

 むし歯を放っておくと細菌の巣となり、口の中はますます汚れてしまいます。細菌がたくさ

ん混じった唾液だえきが誤って気管に入ると、肺炎になる危険性があります。口臭の原

因にもなるため、毎食後に丁寧な歯磨きの習慣をつけてください。

 赤ちゃんのころの口遊びや指しゃぶりの経験が足りないと、口を触られるのを嫌がること

があります。指を歯ぐきに当てるだけで体がのけぞる状態では、歯ブラシを口に入れるこ

とはとても大変です。まず、指の腹で歯ぐきをキュッキュッとこする練習をしてから、優しく歯

磨きを始めます。毎日行うと次第に慣れてきて、歯磨きがしやすくなります。

 ぶくぶくうがいができない、水を含んでも口全体にうまく回せないお子さんは、食後に歯ぐ

きと唇やほおの間に食べかすが残っていないか点検し、歯ブラシやスポンジブラシで

きれいにしましょう。うがいができる、できないで口内の清潔度も違うので、洗面所やお風

呂場で練習しましょう。ラッパを吹いたり、にらめっこをしたり、遊びの中で口の運動を取り

入れるといいでしょう。口の周りの筋肉が発達すると、食べる力も向上します。

 お口の状況は人によって異なります。適切な清掃方法を個別に相談したり、定期的に子

ども専門の歯医者さんの健診を受けることをお勧めします。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員 

佐藤秀夫(鹿児島大学病院小児歯科)

平成22年12月20日 南日本新聞掲載