乳幼児突然死症候群
−危険因子の一つはうつぶせ寝−
こども救急箱(105)
それまで元気だった赤ちゃんが突然反応しない・息をしないといったことがあったとしたら・・・搬送
先の病院で死亡を告げられると、両親または周囲の人々にとってはあまりに突然のことで現実を
受け止められません。「なぜ、うちの子に限って・・」「何がいけなかったのだろうか?」とてもやりきれ
ない思いでいっぱいですが、その原因が何であったか特定出来ない−この病気を乳幼児突然死症
候群と呼びます。
乳幼児突然死症候群は、事故や育児上の不手際や虐待などとは区別され、一つの病気であると考
えられています。生後6か月未満の発症が殆どです。年間150人くらいの赤ちゃんが乳幼児突然死症
候群で亡くなっており、乳児の死亡原因の第2位となっています。日本では解剖を行うことが少ないため、
本当は原因がわからず乳幼児突然死症候群だったケースが、窒息や急性心不全などの診断を下され
る場合もあります。
原因ははっきりしていませんが、赤ちゃんは呼吸を調整する機能が未熟なため無呼吸が起こること
があり、この無呼吸が続くことで発症すると考えられています。危険因子としては家族に喫煙者がいる
こと・低出生体重児であること・人工乳のみでの栄養などが挙げられます。うつぶせ寝も危険因子の
一つと言われています。実際にうつぶせ寝をしないように勧告を行ったところ発症が減ったという国も
あります。しかし、残念ながらこれをすれば絶対に発症を防げるという手段は現在はありません。24時
間赤ちゃんを監視することは不可能であり、あまり神経質になりすぎるのは家族の肉体的・精神的に
負担となるため、かえって赤ちゃんにとっても良いことではありません。
大事なことは、危険因子を避けること、つまり自分が赤ちゃんを寝かせるときにうつぶせ寝を避けるよ
うにすることや喫煙者ならば禁煙を試みること、など赤ちゃんの健康のために出来ることを努力することです。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
川村順平(鹿児島大学病院小児科)
平成23年1月24日 南日本新聞掲載