子どもの鼻水
こども救急箱(106)
子どもの鼻水、どうしていますか。すぐに薬、でしょうか。鼻水止めの薬といえば、抗ヒスタミン薬が
有名です。風邪薬は眠くなりますね。あれは抗ヒスタミン薬の作用なのです。薬を飲んだ後、子どもは
眠る方が都合がいいと考えられてきました。しかし最近、小児科学会から抗ヒスタミン薬はけいれんを
起こしやすくする方向に働くことが報告されています。風邪のときに投与しなければ、熱性けいれんを
減らせるのではないか、という意見もあるぐらいです。
抗ヒスタミン薬は分泌を抑えるため、痰(たん)が切れにくくなったりもします。せっかく咳(せき)をして
痰を出そうとしても、出ないと苦しいですよね。鼻水はまず吸い出す、というのが原則です。鼻水をためて
おくと、中耳炎を繰り返す原因にもなります。
こよりで鼻をくすぐり、くしゃみをさせて取るのもいいでしょう。2歳以降なら片方の鼻をしっかりふさい
で鼻をかませると、練習次第で上手にできるようになります。加湿されているお風呂場で鼻をかませる
と特に効果的です。ただ、耳が痛くなるぐらい強くかませるのは、かえって鼻水を耳に押し込む可能性
がありますので厳禁です。
以前は黄色い鼻水が出ると蓄膿(ちくのう)(副鼻腔(びくう)炎)を疑って、すぐに抗菌薬(抗生物質)
を飲ませていましたが、大半は抗菌薬がなくても治ってしまうこと、薬の効かない菌が増えていることも
あり、出番は少なくなっています。今後Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンが普及すれば、ますます抗菌薬
の必要性は限られてくると思われます。
もちろん鼻炎、痒(かゆ)み止めの薬として抗ヒスタミン薬は有用ですし、最近は脳内へ移行しない眠
気を押さえた新しい薬も発売されておりますので上手に使ってください。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
田中裕治(鹿児島医療センター小児科)
平成23年2月7日 南日本新聞掲載