ワクチンの同時接種  

−接種率向上に期待も−

 
 

 


こども救急箱(107)

髄膜炎を予防するヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンが普及し始めました。それぞれ

生後2〜6カ月に3回、1歳で追加1回の計4回が必要です。三種混合ワクチン(DPT)も同

じ接種回数ですので、これだけでも計12回になります。接種のたびに医療機関を受診する

のは、保護者の負担も大きく、接種の遅れにつながります。そこで最近では、2〜4種類のワ

クチンの同時接種が行われるようになりました。

 複数のワクチンを同時に接種することは、海外では普通に行われてきましたが、日本では

単独接種が原則で、医師が特に必要と認めた場合のみ実施できました。人の体には、免疫

を担当するリンパ球の種類が何億個も準備されていて、たくさんの種類のワクチンに同時に

十分反応することができます。複数のワクチンを同時接種してもワクチンの有効性に全く変わ

りはありません。また、有害事象や副反応が増えることもありません。

 日本小児科学会は、2011年1月、「ワクチンの同時接種は、日本のこどもたちをワクチンで

予防できる病気から守るために必要な医療行為である」という声明を発表しました。同時接種

によって、接種率向上、早期の予防、保護者の経済的・時間的負担の軽減が実現できるとし

ています。接種できる本数に原則として制限はなく、生ワクチンと不活化ワクチンの組み合わせ

や生ワクチン同士も可能です。

 接種部位は、上腕の側、肩の少し下、または太ももの前面外側などです。近い部位に接種する

場合は、少なくとも2・5a以上あければ可能です。一度に何回も針を刺すのはかわいそうですが、

病気にかかったときの苦痛とは比較になりません。同時接種で効率的に早めの予防接種を行い

ましょう。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員 

西 順一郎(鹿児島大学病院小児科) 

平成23年2月28日 南日本新聞掲載