嘔吐下痢症
こども救急箱(108)
今回はウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)の話をしましょう。嘔吐が始まりである場合が多く、半日
から1日続いた後、下痢になることが多いようです。
お子さんが吐くと「何か口にさせなければ、ますます悪くなってしまうのでは」と思うのが親心だと
思いますが、むやみに食事を与えればいいというわけではありません。お父さんは二日酔いの時、
「食べろ食べろ」と言われたら、どう感じるでしょうか。
健康な時の胃腸の大きさ(消化吸収能力)をどんぶりとすると、胃腸炎の時は、おちょこ位まで
小さくなっていると考えてください。小さな受け皿に水分を与えてもあふれて嘔吐してしまいます。
吐いた場合は、しばらく飲んだり食べたりせず胃腸を休めてあげましょう。少し落ち着いてきたら、
スプーン一杯ずつから水分を与えてください。数分ごとに、ゆっくり根気よく与えます。数回飲んで
吐かないようなら量を増やします。市販の経口補水液を使うのもいいでしょう。必要最低限の水分、
糖分、塩分で、あまり食べないことが治療になるのです。
吐き気止めの坐薬(ざやく)もよく使用されますが、脱水や発熱がある時には副作用が出やすく、
子どもの急性腸炎に対しては嘔吐の回数を減らさないという報告があり、使用しない傾向になって
います。
家庭でも脱水を調べる方法があります。子どもの親指の爪を白くなるほど強く圧迫して、それがピ
ンク色に戻るまでに2秒以上かかるようなら脱水ありと考えられます。また乳幼児の突然の嘔吐で
区別しにくい怖い病気に「腸重積症」があります。これは腹痛が起きたりやんだりし、血便を伴うこと
が多いのが特徴です。いつもと違うなと感じられる時は、早めに病院を受診してください。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
古城圭馴美 (鹿児島医療センター小児科)
平成23年3月14日 南日本新聞掲載