漏斗胸
こども救急箱(11)
漏斗胸とは前胸部が凹んでいる病気です.凹みの程度は個人差があり様々ですが,真ん中が陥凹している
人もいますし,胸の片方が強く落ち込んでいる人もいます.ほとんどの人は乳幼児期からこのような症状が
ありますが,小学生の頃から胸の凹みが目立ってくる人もいます.漏斗胸は,おおよそ1000人に1人程度の
割合で起こり,男の子が女の子より3倍くらい多くみられます.漏斗胸は胸の骨の変形と言うよりは胸と肋骨
をつなぐ肋軟骨の変形が原因と考えられています.
漏斗胸の患者さんは一般的に無症状のことが多いようですが,幼児期に風邪などをひきやすかったり,扁桃腺
肥大やアデノイドなどが見られることがあります.中には心臓への圧迫や肺への圧迫などにより,疲れやすい,
激しい運動による動悸・息切れ,呼吸が浅いとか不整脈が現れる場合があります.また,外見的に胸が凹んで
いると本人の心に大きな問題を残すこともあります.
心臓や肺の圧迫症状があれば絶対に手術が必要となりますが,それほどでなくても人前で裸や薄着になること
を嫌がったり,内気になるなど精神発育に障害を与える場合もあり,本人や両親の希望があれば手術をしてもよい
と考えられます.最近の手術方法はナス法を行うことが多くなりました.この手術は陥凹している胸骨の裏側に
金属製のバーを入れ,裏側から前方へと胸骨を押しだして矯正します.その状態で胸骨を固定し,3年後くらいに
バーを抜きとるものです.この方法は以前の方法と比較して手術創が目立ちにくい,入院期間が短いなどの利点が
あります.手術時期は3才から大人まで可能ですが,実際には5才くらいから15才くらいまでに行うことが多い
ようです.
漏斗胸でお悩みの方はお近くの小児外科を受診されることおすすめいたします.
NPO法人医療ネットワーク 下野隆一(鹿児島大学病院小児外科)
(平成18年9月25日 南日本新聞掲載)
(術前)
(術後)