揺さぶられ症候群

 

あんしん救急箱(111)

赤ちゃんの世話をしていると赤ちゃんの機嫌が悪くて、どうやっても泣きやみそうにないほど、ぐずることが

あります。お父さん、お母さんたちは何とかして泣きやませようとして赤ちゃんをあの手この手であやしたりする

でしょう。

 でも、何をしても泣きやまないと次第に疲労とイライラが募り、無意識のうちに赤ちゃんを激しく揺さぶったりして

しまうことがあるのです。

 赤ちゃんは頭が重く首の筋肉が弱いため、揺さぶられると頭を自分の力で支えることができません。そのため、

頭蓋骨の内側に脳が何度も打ちつけられて、脳や脳の血管が損傷を受けてしまいます。損傷を受けた脳は低

酸素状態になり、結果として元気がなくなる、機嫌が悪くなる、すぐ眠ってしまう、嘔吐、けいれんなどの症状を

起こします。

 さらに重症になると呼びかけても答えなくなり、目を覚まさず呼吸が止まり死に至ることもあります。命が助かって

も失明、けいれん、発育の遅れなど様々な後遺症を残すことがあります。もし赤ちゃんにそのような症状があれば、

病院を受診しましょう。

 症状からもわかるように、赤ちゃんを揺さぶることは危険であり、決してやってはいけないことです。以前「高い、

高い」をしただけでも揺さぶられ症候群になると言われたことがありましたが、その程度では脳が打ちつけられる

ことはありません。ただし、「高い、高い」は赤ちゃんを落としてしまう危険があるためしないようにしましょう。

 かわいい赤ちゃんを守るため、お父さん、お母さんだけでなく赤ちゃんの周りの一人一人が正しい理解をもって、

赤ちゃんに接するよう心がけたいものです。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員 

井之上寿美(鹿児島市立病院小児科)

平成23年5月9日 南日本新聞掲載