耳あかと耳かき
こども救急箱(113)
幼いころに膝枕で耳掃除してもらうと、家族とのコミュニケーションがとれ、後々いい思い出になります。
ただ、子どもの耳掃除をどうしようか、と迷っている保護者も多いようです。
日本人の耳あかは、かさかさしている人が7、8割で、残りの人が「ねばねば」だといわれています。
少しの量の耳あかは健康に問題なく、外耳道を保護し、抗菌作用もあります。また、耳の穴は自浄作用を
持ち、個人差はありますが「かむ」などあごの動きによってゆっくりと、少しずつ、耳あかが耳の入り口の
ほうへ移動してくるそうです。
耳あかは鼓膜近くではなく外耳道の耳の入り口に近い部分で作られ、その周辺にたまります。鼓膜の
近くに耳あかが塞栓(そくせん)を作るのは綿棒などで押し込んでしまった結果であることが多いのです。
ただ、小児科医が子どもさんの耳の中をのぞくと、びっしり耳あかが詰まっていることがあります。耳あ
かは自然に排出されるといっても、すべてがそういうわけではないようです。耳あかが耳の穴をふさいで
しまうと、難聴を起こすこともあります。
子どもの耳掃除は、嫌がったり、時に思いがけない動きをしたりして、意外に危険です。外耳道を傷つけて
出血したり、外耳炎になることもあります。耳の入り口付近の見える範囲の耳あかを無理せず取って、綿棒
などを耳の奥まで入れるのはやめましょう。耳あかが耳の穴をふさいでしまうようなら、耳鼻咽喉科の先生
に相談して、取ってもらうのがよいと思います。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
藤山りか (鹿児島市医師会病院小児科)
平成23年6月6日 南日本新聞掲載