熱 と 汗
こども救急箱(116)
昔から、熱があるときは汗をかかせて熱を下げなさい、といわれます。汗をかくと本当に熱は
下がるのでしょうか。体にウイルスや細菌が入ってくると、体を守るために戦いがおこります。
このとき病原体を追い払う目的で発熱物質が作られます。発熱物質は脳にある体温を調節する
場所で働き、体の設定温度を高くします。体温が上昇すると細菌やウイルスと戦う力が強くなる
ため、熱が上がることは有利に働きます。
温度設定後しばらくは、本当の体温が脳の設定した温度より低いので、寒く感じます。また、
熱を効率的に作るために筋肉をふるわせるため、ふるえが起こります。熱が逃げないように皮膚
の血管を縮めるので、手足は冷たくなります。
体温が脳の設定した温度まで上昇すると、手足もあたたかくなり、ふるえも止まります。発熱物
質が作られなくなると今度は、体温を調節する場所が体温設定を元に戻します。そのために皮膚
の血管は広がり、汗をかくことで体温を下げ、熱が下がります。
したがって、汗は無理にかかせるものではなく、体が熱を下げるために必要と判断し自然にかく
ものです。体がまだ体温を上げるよう働いているときに、いっぱい布団などをかぶせると、熱がこ
もり(うつ熱)、設定した温度以上に体温が上昇し、逆に体に悪い影響を与える可能性があります。
うつ熱による脳症もあります。
小さな子供は自分で衣服の脱ぎ着ができません。明らかに寒気があるとき以外は、熱がこもらな
いように薄着にさせる注意が必要です。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
楠生 亮 (鹿児島市立病院小児科)
平成23年8月1日 南日本新聞掲載