3歳健診時の視力検査
こども救急箱(117)
「赤ちゃんはいつから目が見えるのですか」「目つきがおかしくないですか」。1カ月健診の際に
よく尋ねられます。1カ月では、まだ明暗が分かる程度で、実はあまり見えていません。目つき
(眼位)は4カ月くらいでしっかりしてきます。その後は目でものを追う追視がはじまり、安心される
せいか、子どもの視力を気にする保護者は少なくなります。
1歳児の視力は0・2〜0・25ほどで、大人と同じ1・0が見えるのは3歳でも3人に2人。片方の
視力が0・2あれば不自由なく生活できています。意外に子どもの視力は低いのです。
3歳健診のときに、視力検査の紙が送ってきて自宅で検査を行います。「3歳」という年齢は、
視力が成人に近づくとともに、近頃流行の3Dのような立体視を獲得したり、視力が回復したりする
可能性(感受性)がある最後のチャンスとなります。
最初からまぶたが下がっていて瞳孔(黒目の中)をふさいだり、斜視(視線が合わない)などが
あれば、保護者が見つけることは比較的容易です。一方、3歳健診では、左右の視力に差があり
見え方の悪い目を使わなくなることで見えなくなる「不同視弱視」の発見が大事です。
前述のとおり、片方の視力が0・2あれば、子どもは不自由なく生活できるので、保護者が日常
生活で発見するのは困難です。そこで片目ずつの検査が必要になります。片目を紙などでしっか
りふさぎ、隙間からのぞきこまないようにします。子どもがふざけている場合、実は見えていないこ
とをごまかしていることが多いので要注意です。「ほら、空をひらひら飛ぶものは?」などヒントを
与え、答えてもらってはいけません。異常があれば早期発見し、治療で良くする機会を逃さないこと
が大事です。
左右の見え方に差があるようなら健診のときに相談されるか、眼科専門医に相談してみましょう。
子どもの視力を守るには、保護者が頼りです。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
根路銘安仁(鹿児島大学病院小児科)
平成23年8月22日 南日本新聞掲載