頻回・時間外受診
こども救急箱(118)
病気の時には安静と水分摂取が重要だと古くからいわれています。カナダでの研究によると、
時間外の救急外来で長時間待って医師に診てもらった患者さんは、その後の入院率が高く、待
たずに帰った患者さんはその後重症化するリスクは変わらなかったそうです。重症だから長時間
待っても帰ることができなかった、つまり混んでいるから帰ったのは軽症だからという解釈もできま
すので、この種の研究結果はどのようにも解釈できるという問題点はあります。
日本で行われてきた病院・医院へ到着した順番で患者さんを診察する方法は、待ち時間が長く
なりがちで、その間は横になって休むこともできず、水分をこまめにとることもできません。医師に
診てもらう利点以上の不利益を考慮する必要があります。例えば、今年大流行した手足口病は
特別な治療が必要ではありませんので、診断が目的の受診になります。
小児科医も一生懸命みていますが、どんなに急いでも一人の医師が決まった時間内に診ること
ができる患者数には限界があります。たくさんの人が同時に受診すれば当然待ち時間は長くなりま
す。複数の医師がいる病院でも時間外は1人で対応します。軽症の患者さんが増えて待ち時間が
長くなると、重症の患者さんの不利益は増しますし、さほど重症ではない患者さんが、大勢の患
者さんとともに狭い待合室で過ごすことで予想外に悪くなることもあります。そのために多くのクリ
ニックや病院が予約制を取り入れるようになりました。
時間外受診には不利益があることを理解していただくことが重要です。世話をしているご家族
の不安解消のための頻回受診が、結果的に子どもの不利益になるかもしれません。可能な限り
診療時間内の予約受診を心がけていただくことが病気の子どものさらなる重症化を防ぐはずです。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
楠生亮(鹿児島市立病院小児科)
平成23年9月5日 南日本新聞掲載