「子宮頸がんワクチン」
こども救急箱(122)
小児の予防接種は、麻疹、風疹、インフルエンザ等の感染症に対するものが多いですが、子宮頸(けい)がん
ワクチンはがん予防を目的としています。
子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)で、性行為で生じた微小な傷から表皮内に侵入し感染し
ます。子宮頸部に感染したHPVは通常一過性で約90%は2年以内に消失しますが、12カ月を超える持続感染
はがんになる危険性が増加します。
感染リスクが高いのは性行動を始めた後の思春期から成人若年期で、40〜60%に及びます。HPV感染から
数年〜十数年ののちに前がん病変の状態を経て、感染者の千人に1人の女性が子宮頸がんを発症します。
子宮頸がんワクチンは10歳以上の女性に、通常は1回目から1、6カ月後に2、3回目を接種します。国内の
臨床試験では注射部位の痛み、発赤、腫れ、全身性の副反応では疲労、頭痛、胃腸症状等が認められました。
鹿児島県内では対象者に接種費用を全額助成している自治体もあります。
細胞診による検診の普及が、子宮頸がんの発生と死亡を減少させることに有効です。しかし、我が国の検診受
診率は先進国の中では著しく低く、近年は20、30代の若年女性の発生、死亡数の増加がみられます。
HPV感染リスク時期以前にワクチンを接種することで予防効果が期待できますが、既に感染しているウイルス
を排除する効果はなく、前がん病変の進行を遅らせたり、治療する効果もありません。
また、ワクチンに含まれる型のHPV感染予防には優れた効果を発揮しますが、すべての発がん性HPVの感染
を防ぐことは難しいため、ワクチン接種後も、20歳を過ぎたら定期的な子宮頸がん検診の受診が必要です。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
内門一(鹿児島こども病院小児科)
平成23年11月28日 南日本新聞掲載