急性白血病@ 

−子どものがんで最多−

 

こども救急箱(123)

3月11日の東日本大震災で、福島原発の津波による被害と放射能漏れ事故があり、
以降さまざまな問題が出ています。放射能被ばくと急性白血病を結びつけるのは、広
島と長崎の被ばく問題が語り継がれている日本では当たり前のことでしょう。ただ、政
府や企業が発表している放射線量の情報が正確だとするならば、福島原発事故と子
どもたちの急性白血病は関連しないのではないかと思っています。

 子どものときにかかる難しい病気の代表である「小児がん」ですが、その中で最も多
いのが急性白血病です。有名な病気ですので聞いたことがないと言う人はいないの
ですが、正確に知っている方は非常に少なく、悲劇的なイメージが先行しがちです。
 小児人口(
15歳未満)3万人あたり1年間で1人くらいの割合で発症しますので、鹿
児島県であれば年間に
10人くらいが発症しています。「急性」の意味は、治療しなけ
れば3カ月以内に命がなくなることです。大変な病気ですが、いろいろな「がん」の中
で過去
30年間、最も治療成績がよくなった病気でもあります。大まかな言い方をする
と、子どもの小児急性白血病の
70%以上が治る時代になりました。
 「どんな症状があるのですか」と聞かれたり、「あのとき受診していれば」と悔やまれ
ることもあります。しかし、急性白血病だと診断できる特徴的症状はありませんし、早
期発見で治療成績が上がる病気でもありません。それで、一般的な「がん検診」の対
象にはならない病気として知られています。
 治療に反応するかどうかは、どのような型の白血病かで決まります。つまり、急性白
血病と言っても種類がたくさんあるのです。診断名は医療制度上必要ですが、患者一
人一人にとっては診断名より薬が効くかどうかが重要です。

 

認定NPO法人子ども医療ネットワーク理事長 

河野嘉文(鹿児島大学病院小児科)

平成231219日 南日本新聞掲載