急性白血病A
−投薬工夫で治療効果−
あんしん救急箱(124)
ひらがなで書く「がん」は、学問的には悪性新生物という言い方をします。その中には
肉腫と癌腫(がんしゅ)がありますが、「がん」は両者の総称で、「○○がんセンター」と
「がん」をひらがなで書いてあるのは肉腫も癌腫も、つまりすべてのがんの治療をすると
いう意味です。小児がんはほとんど肉腫で、最も多いのが肉腫の一つである急性白血
病です。
なぜ小児の急性白血病の治療成績がよくなったのかとよく聞かれます。薬がよくなっ
たからと考えるかもしれませんが、実は新薬が出てきたのは21世紀になってからです。
現在も基本となるのは50年以上前からある薬で、使い方の工夫(間隔を空けず、より
多い量を使う)によって成績が良くなりました。
成分献血など安全な輸血療法が行えるようになり以前より大量の薬を使用でき、抗
菌薬(抗生物質)や抗真菌薬(かびに対する薬)の発達で治療間隔を短くできるように
なりました。「古い薬」というと勘違いされるかもしれませんが、副作用がすべてわかって
おり使用上の安全性は高い薬と言えます。
過去50年の小児急性白血病の治療の中で、成績向上に最も貢献したのが放射線
治療と抗がん剤の髄腔内(ずいくうない)投与です。しかし、放射線照射は治療終了か
ら長期間経った後の合併症が多いのではないかという議論があり、最近はごく一部の
難しい型にだけ行う傾向に変わってきました。
がん治療に使われてきた薬は基本的に毒性が強く、治療の副作用が必ずあります。
法律でも副作用が許されない風邪薬などとは扱いが異なっています。そのような状況下
で、いかに後遺症を残さず治療するかが新たな目標となっています。
認定NPO法人子ども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児科)