口内の汚れ

 

こども救急箱(130)

口の中の汚れが全身に影響を及ぼすことをご存じですか? 口の中には300種類
以上の細菌が数億個もいて、歯磨きをさぼったり、上手に磨けないと
歯垢しこう)
とよばれる細菌のかたまりができて、虫歯や歯肉炎になります。
 子どもの虫歯は、大人の虫歯より進行が速く、放っておくと歯の根っこの先から血流
にのって細菌が体中に回ってしまいます。歯肉炎で歯ぐきから血がでると、そこから
細菌が入り込みます。元気なときには免疫が細菌をやっつけてくれますが、体が弱っ
ていると全身に影響を及ぼし、高熱がでて入院が必要になることもあります。
 心臓病、白血病や再生不良性貧血など細菌に感染しやすい病気の子どもは、特に
注意が必要です。日本では生まれてくる子どもの100人に1人が心臓病を抱えてい
ます。心臓の小さな傷や弁の動きがよくない所に血液中から侵入した細菌がくっつい
て、感染性心内膜炎という病気にかかりやすくなります。また、小児白血病は小児が
んの中でもっとも多い病気で、感染を防ごうとする力が低下し、感染の危険性が高く
なります。
 こういった病気の手術をする場合、体のどこかに虫歯など感染の原因があると、手
術後に感染症を起こし全身状態が悪くなるおそれがあるため、手術が延期されること
もあります。見た目は大きな虫歯がないように見えても、エックス線写真を撮ると見つ
かることも珍しくありません。特に乳歯や生えて間もない永久歯の場合、なかなか痛
みを感じないため子どもも親も気付かないことがよくあります。
 口の中を清潔に保つには、日ごろの歯磨きが大切です。定期的な歯科受診で専門
的な口のお掃除をしてもらったり、虫歯がないかどうか確認してもらいましょう。

 

認定NPOこども医療ネットワーク
伊藤千晶(鹿児島大学病院小児歯科)