母乳育児A
−ストレスで乳量減も−
こども救急箱(136)
前回は驚くほど太っている赤ちゃんの話をしましたが、1か月検診では逆に、体重があまり
増えない赤ちゃんをみることもしばしばあります。お母さんに話を聞くと「欲しがらないので心
配になり、眠っていても授乳するようにしているのですが」と言われます。
このような状態は筋肉の緊張が弱い赤ちゃんに多くみられるようです。欲しがらない赤ちゃ
んの場合、欲しがって泣くときにあげるのでは不足しますから、時間を決めて飲ませることも
検討しなければなりません。
一方、赤ちゃんは泣いて欲しがっているけれど、お母さんのおっぱいがなかなか出なくて、
体重が増えない場合もあります。母乳のみの育児を頑張りすぎて、脱水と栄養不足で入院治
療を必要とした赤ちゃんもときどきいます。おなかがすいて泣いているのに、おっぱいが出る
まで我慢してねと言われても、赤ちゃんは納得できないでしょうね。おっぱいがたくさん出れば
10分くらいで必要量を飲めると育児書には書いてありますね。赤ちゃん側から母乳育児を考
えてみることも大切でしょう。
おっぱいの出方は個人差が大きく、努力しているのに十分におっぱいの出ないお母さんは
大変だと思います。そんなときは、ミルクを一時的に併用し、お母さんに少し休む時間をとって
あげるという発想も大事です。
乳牛はストレスや疲労で乳量が減るそうですが人も同じですよね。赤ちゃんを満腹にできる
量のおっぱいが出ないお母さんには、出るおっぱいをすべて飲ませていれば、ミルクを足して
も完全母乳栄養と一緒です、と伝えます。
母乳育児はとても大事ですが、完ぺきを求めるあまり、親子ともに苦しめることにならないよ
うにしたいものです。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
楠生 亮(国立病院機構南九州病院小児科)