鉄欠乏症貧血

−離乳食でしっかり補充を−

 

こども救急箱(139)

 人体にとって、鉄はとても大切な栄養素です。酸素を運ぶ赤血球を作る原材料になります。
鉄が不足すると赤血球が十分に作られない状態、いわゆる鉄欠乏症貧血と呼ばれる状態に
なります。
 生後9か月以降は鉄欠乏症貧血が起こりやすく、この時期の貧血を特に離乳期貧血といい
ます。母乳、ミルクには鉄がとても少なく、離乳期には母親からもらた鉄もなくなってしまい、
身体の急激な発育で鉄の必要量が増大します。離乳食で鉄を十分にとっていないと、すぐに
鉄欠乏状態となってしまいます。
 ただの貧血と思われがちですが、乳児期の鉄欠乏症は怖い症状を起こします。代表として、
口周り、鼻の根元、顔色が白くなる、疲れやすくすぐにゼエゼエしてしまう、などがあります。
ひどくなると味覚がおかしくなり、舌炎、口角炎も起こします。症状がみられた場合は、早めに
医療機関を受診する必要があります。最近では、乳児期の鉄欠乏状態が発達、発育に悪い
影響を与えることがわかっています。
 鉄欠乏状態の治療は主に二つの方法があります。鉄剤投与と食事療法です。鉄を多く含む
赤ちゃん用のシロップ薬があります。これをだいたい3ヶ月飲みます。副作用は少ない薬です
が、便が黒くあったり、まれに食欲低下、吐き気、下痢、便秘といった副作用が出ることもあり
ます。
 もちろん薬に頼らず離乳職でしっかり鉄を補充することが望ましいです。鉄を多く含み、離乳
食に使える食材として(ホウレンソウ、コマツナ、鳥レバー)、中期(マグロ、カツオ、青のり)、後
(牛肉)などが挙げられます。食事内容が偏ってはいけませんが、上記の食材を意識したメ
ニューを心がけ、鉄欠乏症貧血、鉄欠乏状態を上手に予防しましょう。



認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
          
 稲葉泰洋(田上病院小児科)