冬の薄着

−我慢は風邪の引き金に−

 

こども救急箱(144)

この冬は例年にない厳しい寒さです。寒いからといってすぐ厚着をすることはあまり
勧められません。「子どもはかぜの子」といわれるように、子どもの「薄着」は身体を鍛
え、気候や環境の変化に対応できる能力を身につけるために重要です。健康な子ど
もは代謝が活発で体温も高めです。熱を皮膚から多く放散する必要もあります。
 赤ちゃんでも56カ月を過ぎると体温調節の能力もしっかりしてきますので、着るも
のとしては大人より1枚少ないくらいの服装でよくなります。幼稚園や小学生くらいだ
と、寒い時期でも長そでを着ていると暑いと感じてしまう場合も少なくないようです。冬
でも半袖、半ズボンで平気な子も多く、大人が見て寒そうに見えますが、元気に過ご
せていれば問題はありません。

ただ、極端な薄着はかえって風邪の原因になります。ヒトは体温が下がると代謝が
不活発になり、免疫に関連する細胞の活動や酸素の活性が低下します。その上、冬は
空気が乾燥し、ウイルスにとって有利な環境となります。「薄着」の鍛錬は大切ですが、
体温が下がるのは健康によくないので、状況に応じて考えましょう。朝はちょっと寒いと
感じても、動いているうちに暖まり1枚脱いで過ごすといいですね。

小学生くらいになると「お友だちが半袖だから自分だけ長袖は着たくない」というよ
うな発言・意地も見られます。それを無視するのもよくありませんが、ずっと鳥肌がた
ったまま授業を受けるような状況は「鍛錬」の域を超えていると理解する必要があるで
しょう。

上手に「薄着」で過ごすためには、睡眠を十分に取り、体調を整え、食事をきちんと
取り、体温維持に必要なエネルギーを確保することが最低条件です。



鹿児島大学病院 小児科
野村 裕一