飛行機で泣く赤ちゃん

−子どもに合わせ余裕の旅を−

 

こども救急箱(146)

 出張などで飛行機を利用すると、赤ちゃんの泣き声を耳にすることがあります。私は
小児科医なので、泣き声はそれほど気になりませんが、何で泣いているのだろうと思
って聞いています。きっとおむつがぬれているか、おなかがすいているのだろうなと普
通に考えていました。
 飛行機の中の機内環境は2千メートルの山の中にいるのと同じで、空気の圧力も地
上の80%だそうです。また機内の空気は乾燥しており、長距離飛行の場合には湿度
20%以下に下がることもあるようです。大人に比べて身体の中の水分比率が高い
赤ちゃんは、より多くの水分を空気にとられて、お母さんより早くのどが渇くはずです。
航空会社の機内サービスの目的は、乾燥した機内環境をやわらげる目的もあると思
います。
 私たちは機内サービスで飲み物を飲みますが、同じように赤ちゃんにもこまめな水
分補給がかかせません。飛行機は20分ほどで2千メートルの山の上と地上の間を登
ったり降りたりするので、離着陸に強く泣く赤ちゃんも、耳が痛いはずです。大人はあ
めをなめたりガムをかんだりします。赤ちゃんには、おっぱいや哺乳瓶を吸ってもらい、
もぐもぐさせてあげればいいでしょう。
 楽しみにしているおじいちゃん、おばあちゃんのために、赤ちゃんをつれての長旅を
しなければならない方もいらっしゃると思います。赤ちゃんを大人に合わせるのではな
く、弱い赤ちゃんに合わせた余裕を持った旅にしてください。インフルエンザなどの感
染症が流行している時期には、人ごみの多いところを避けて待ちましょう。お母さんた
ちが風邪をひくと赤ちゃんも風邪をひくかもしれません。マスクや手洗いなど感染対策
にも注意してください。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
楠生 亮(国立病院機構南九州病院 小児科)