ほめて楽しく

 

こども救急箱(147)

「人って自分が育てられたように自分の子供を育てる傾向がありますよね。我が家は
二つの異なる文化がぶつかり、娘からは『お母さんはいつも私が自分に自信を無くす
ようなことばかり言う!』と言われました。」とは米国人との間に生まれた子どもさんを
育てた友人の言葉です。
 長所を褒めて伸ばそうという方針は社会全体で叫ばれていますが、現実の日本文
化は欠点を矯正するのが主流のようです。子どもを言葉で正しい方向へ導こうとしが
ちですが、「子は親の背中を見て育つ」と言われるように、手本を示せば言葉は必要
ないということも知られています。実際には、社会の基準は多様であり、導くべき正し
い方向というのが意外と難しいものです。自分に合うことと合わないことの区別は簡
単ですが、正しいことと悪いことの2つに分けられるものではないからです。
 何時に寝て何時に起きるかというテーマから、後片付けができるか、薄着か厚着か、
予防接種をするかしないか、小児科を受診するか家で寝ているか、などいろいろ大人
の基準で子どもに指示することが多いと思います。年齢によって適切な対応は異なり
ますが、会話が成立するようになったら、まずは子どもの意見を聞いてみるという余
裕を持てればいいなと思います。もちろん、予防接種をしたいという子どもはいないと
思いますが、そこは必要性を理解させてあげてください。
 子どもの良い点をほめることで少しでも子育てが楽しくなればいいですね。お母さん
の気持ちに余裕がないとほめることはできませんので、努力して余裕を作ってくださ
い。先日、我が家の6歳児が「早く寝ると朝は気持ちよく起きられるね」と言いながら起
きてきました。早く寝るべきだと自覚したかもしれません。寝る子は育つ、とほめてあ
げました。

 

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)