障害理解し温かく見守ろう

 

ども救急箱(148)

日本各地には、言い伝えとして「福子伝説」があるそうです。家庭に障害児(障碍児、障がい
児などの記載方法もあります)が生まれると、その子が一生困らないように家族が団結し、子
どもに優しく接しながら仕事に精を出すため、結果として家が繁栄するという趣旨です。そうい
えば、と思い当たる読者もいらっしゃると思います。

 障害の中にも、目に見える障害と外見からは分からない障害があり、現代は後者の「発達
障害」がよく議論されます。教育現場や職場でも同様の悩みがあるようですが、相手の気持
ちを考慮できなかったり感情を制御できないことなどについて、「しつけが悪い」と親が責めら
れる場合が、いまだに多いようです。しつけや性格が悪いのでなく、生まれつきの障害である
と周囲が理解することが非常に重要です。誰のせいでもないのです。

 発明王エジソンや相対性理論のアインシュタインは、小さい頃は学校に行けず、家庭教師
について勉強したと伝記に書かれています。障害された機能は戻らないけれど、別の能力を
磨き、成長とともに不足する能力をカバーして生きていけることを示しています。重要なのは
悪く見えるところを矯正しようとするのでなく、伸びる能力を育てて不足する部分を目立たなく
することです。

 言葉で理解できても実践は難しいです。現代社会にはそんな余裕はないと感じることも多い
かもしれません。でも日本社会は大昔から福子伝説という形で人間の生きる道を示し、障害
を背負った子どもを守る重要性が伝承されています。救急医療の充実も重要ですが、障害を
克服するお手伝いをする部門の充実も同じように重要です。障害のある子どもを福子として
温かく見守って幸せになろうではありませんか。

 

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)