舌小帯短縮症
こども救急箱(149)
子どもの口の中を観察してみて下さい。舌の裏側の真ん中に、1本の細いスジのようなも
のがあります。舌小帯です。通常、新生児では太く短く、舌の先端についていることが多いの
ですが、成長とともに次第に後ろに下がります。この舌小帯が下がらず短いままになっている
状態を、舌小帯短縮症といいます。
舌を指で持ち上げようとしてもうまく持ち上がらない、「あっかんべー」をさせると舌の先端が
ハート型にくぼむ=写真、口を大きく開けた状態で舌の先を上唇につけられない、ということ
はありませんか。
舌小帯短縮症は、舌の運動が制限されるため、哺乳障害や嚥下(えんげ)障害、発音障害
がみられます。具体的症状は、哺乳量が少ない、食事のとき丸のみしていることが多い、食
が細い、ラ行、サ行、タ行がうまく言えない、などです。また、舌小帯が入り込み、下の前歯の
真ん中に隙間ができてしまう場合もあります。
対応としては、必要に応じ舌小帯を切除します。哺乳障害があればできるだけ早く、発音障
害だけなら発音が完成する就学前までに行うのが望ましいでしょう。以前はメスで切除し縫合
していましたが、近年では、レーザーが応用されるようになりました。レーザーの利点は、止
血効果に優れ縫合の必要がなく、処置時間が短く入院の必要もありません。傷の治りも早く
きれいで、処置後の痛みや不快感はほとんどありません。舌小帯の切除後は、傷口が癒着し
ないよう舌を動かすトレーニングをする必要があります。
傷の治り具合の確認と舌の運動の練習のために、処置が終わっても定期的に受診して下さ
い。舌小帯を切除するだけで発音障害が改善されるわけではないので、言語聴覚士による言
葉の練習も併せて受けましょう。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
深水 篤(鹿児島大学病院小児歯科)