B型肝炎ワクチン
子ども救急箱(151)
日本は世界的にみればワクチン後進国と言われてきましたが、最近の厚生労働省は「予
防接種で子ども達を病気から守ろう」という姿勢を明確に打ち出しています。本年4月から
肺炎球菌ワクチンやヒブワクチンが定期接種(公費負担)になって受け易くなったことでも
わかると思います。
小児のワクチンに定期接種と任意接種がありますが、医学的な重要性に差はなく、資金の
都合で2つに分けられていることは知られておりません。「任意接種はやってもやらなくてもよ
いという意味でしょう」と、保護者からと聞かれることがよくありますが、公費負担でない予防
接種というのが正確な意味です。
意義が分かりにくい任意予防接種にB型肝炎ワクチンがあります。日本小児科学会が作成
した最新の推奨スケジュールでも、母親がキャリアでなければ、生直後から接種してよいとな
っていますが、小児科医の間でもなぜ推奨するのだろうと疑問を持っている先生が多くいます。
日本では約30年前からB型肝炎ワクチンはキャリアの母親から赤ちゃんへの感染(垂直感
染)を予防するためのワクチンという認識があるからです。
ところが世界的にはWHOの提唱にそって、90カ国以上で生まれたらすぐ全員の赤ちゃんに
定期接種しています。このウイルスは母子感染や輸血による感染だけでなく、日常生活で感
染(水平感染)してキャリアになることが判明したことから、知らないうちにキャリアになって将
来肝硬変や肝がんになることを防ぐ意図で推奨されています。
少しわかりにくいワクチンかもしれませんが、日本は世界的に例外的な状況であることを知
り、子ども達を将来の病気から守ってあげましょう。インターネットネットで「VPD」(ワクチンで
防げる病気という意味)と検索したら詳細な情報がみつかります。
認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文 (鹿児島大学病院小児診療センター)