予防接種
こども救急箱(152)
風疹の流行が報道されています。内容を聞いていると未曾有の大流行なのかと感じてしま
いますが、日本では数年前まで年間10万人以上がかかっていたありふれた病気です。MR
ワクチンが子どもたちに徹底するようになり、発症する人数が激減し、2年前には年間で200
人程度しか発症しなくなっていました。
なぜ今年は騒がれるのでしょうか。2千人以上という数字もありますが、子どもの病気と考
えていた風疹が男性成人で流行しているからと思います。風疹は妊婦さんが注意すべき病気
という知識を変えるべきだと報道されているのです。
過去の先天性風疹症候群の歴史を調べると「予防接種は子どものもの」という誤解も大きな
要因になっていることがわかります。また、一度かかったら大丈夫という考えは、毎年何十万
人もの患者さんが出ているときには有効ですが、現在のように患者数が少なくなった風疹に
はあてはまりません。
予防接種を考えるとき、重要なこととして、誰のための予防接種かという知識を持つことが
挙げられます。ご主人から妊婦さんに感染させる可能性がある風疹もそうですが、毎年流行
する季節性インフルエンザでも同じことが言えます。働き盛りの方は重症にならないので、接
種する義務感を持ちにくいのですが、赤ちゃんや老人に接する人は率先して予防接種するべ
きです。
子どもに予防接種することは考えても、自分が受けることを最優先に考える保護者は意外と
少ないのです。予防接種は本人を守るだけでなく、周囲の人を守るためにつくられているので
す。感染症は子どもの病気と考える人が多いと思いますが、成人が子どもに病気をうつすこ
ともよくあります。風疹の流行を通して予防接種が必要なのは子どもだけではないことを再認
識してほしいと思います。
認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文 (鹿児島大学病院小児診療センター)