子どもが教えてくれる大切なこと
こども救急箱(153)
子どもは無限の可能性を持っているとか、子どもは天才だとか言われます。子どもが成長し
ておとなになると、多くの場合これらの特性は影を潜めてしまいます。子どもの気持ちそのま
までいると「子どものような奴」と馬鹿にされることもあるでしょう。成人社会のルールを守りつ
つ、子どもの特性を持ち続ける方法はないものでしょうか。
私ども小児医療従事者は病気の子ども達の治療を担当させていただき多くのことを学びま
す。よく子育てをすることで親が成長できると言われますが、特に命をかけて闘病する子ども
達が伝えてくれるメッセージは、医療従者にとって最も優れた教材だと考えております。次代
を担う子ども達の成長と発達をサポートするつもりで仕事をしている小児科医ですが、逆に子
ども達から教えられることばかりという現実です。
難病の子ども達の生きようとする姿勢は、200年前に儒学者佐藤一斎が記した言志晩録
(西郷隆盛の愛読書と言われる言志四録)に書かれている言葉、「過去に未練をもたない、未
来に気を揉まない」そのものです。不幸にして難病に冒されながらも自らの境遇を受け入れて
厳しい治療に立ち向かい、苦しい中でも日々喜ぶべきことを見つけ、担当する医師、看護師
や看病する両親の励ましに応えて頑張ってくれます。本当に生きようと努力する尊い姿勢で
す。
私たち成人はとかく不遇を恨み、過去を後悔し、未来を憂いがちで、喜びや幸せを感じる気
持ちに欠けるように思います。苦しい環境で一生懸命に闘病しているご家族がたくさんありま
す。病気の子ども達が教えてくれる「今を生きる」重要性を多くの方々とともに学びたいと思い
ます。
認定NPO法人こども医療ネットワーク
理事長 河野嘉文 (鹿児島大学病院小児診療センター)