過換気症候群
子ども救急箱(155)
息が苦しいといって、救急車で来院する小学校高学年の児童や中学生がいます。その中
には、特別な病気ではなく、過換気症候群の子どもがいます。不安や恐怖、痛みが続く場
合に呼吸は無意識に早くなりますが、ハーハーしすぎる「過換気」を続けることで、息がさら
に苦しくなり、頭痛や手足のしびれ、場合によってはけいれんを起こすことがあります。
このような場合に体の中で何が起きているのでしょうか。過換気の状態が続くと、血液中の
二酸化炭素が吐く息と一緒にどんどん出てしまいます。そうすると、血液はアルカリ性に傾
き、このことがこれらの症状を引き起こします。
治療として、ペーパーバッグ法という紙袋を鼻と口にあてて、吐いた息をもう一度吸ってもら
う方法が多く用いられました。しかし、誤った方法では呼吸ができなくなったり、鼻と口を覆わ
れると、息ができなくなるのではという不安から、逆に呼吸が早くなることがあり、今は勧めら
れる治療法ではありません。
私もペーパーバッグ法を行っていましたが、うまくいったことは一度もありませんでした。初
期治療で大事なのは、患者を安心させる声かけです。過換気の時は胸式呼吸になっているこ
とが多いので、「おなかを膨らませて息をしてごらん」と声かけをして、腹式呼吸になるように
誘導したり、息を吐いたときに少しだけ胸を押して、息を吸うまでの時間を少し長くしてあげる
ことが有効な場合があります。
それでも改善しないときは、病院で抗不安剤の投与が必要になる場合もあります。
背景にぜんそくや心臓の病気など、基礎疾患があることもありますので、初期対応を行って
も息苦しさが改善しない場合には、病院で必ず見てもらってください。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
楠生亮(国立病院機構南九州病院小児科)