都市伝説(?)

子ども救急箱(159

 

 根拠が不明なうわさ話を都市伝説と言います。成長発達段階の子どもの関連では、牛乳を

飲めば身長が伸びるとか、バレーボールをすると背が高くなる、などの話も都市伝説の部類

でしょう。牛乳でカルシウムを補給することは意味がありますが、カルシウムは骨を強くする

作用はあっても骨を伸ばす作用はありません。バレーボールやバスケットボールは背が高い

人が活躍できますが、それをやると身長が伸びるのではないです。

 病気の関連では、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)やはしか(麻疹)は小さいうちにかかった

方が軽い、というのも根拠がありません。訴えが少ないので周囲の大人にとって軽いように見

えるだけです。

 また、風邪を引いたら抗生物質(抗菌薬)を飲むという発想も根拠のない都市伝説のような

ものです。風邪は医学的にはウイルス性上気道炎という病名ですので、ウイルスという微生

物が原因です。抗生物質はウイルスには効きません。

 日本の子ども達は正解で一番抗生物質を飲んでいると言われております。世界中で最も販

売高が大きい抗生物質が、ほとんど日本でしか売れていないという事実が根拠になっている

ようです。子どもは自分で抗生物質をくださいと依頼しているわけではありませんから、「世界

でいちばん抗生物質を飲まされている」とい言い換えることもできます。

 抗生物質は細菌が原因の病気では重要な薬です。必要なときには決められた日数をきち

んと飲むことが重要で、自分の判断で中止することは危険です。勝手にやめても構わない抗

生物質は、その病気が抗生物質による治療を必要とする病気ではないと思います。

 最近は少なくなったと思いますが、不必要な薬をもらうために受診することはやめたいもの

です。子ども達が丈夫に育つために。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長

河野嘉文 (鹿児島大学病院小児診療センター)