たばこから子どもたちを守る(2)
こども救急箱(16)
「NANA」というマンガが子どもたちの間ではやっています。喫煙シーンがふんだんに出ている
このマンガは、子どもたちとたばこの状況を象徴的に表しているのでしょう。
一九八八年から、当時の文部省は子どもたちにたばこの害を教科書で教え始めていますが、子どもたち
は知識・建前としてたばこを吸ってはいけないことを理解しながら、現実問題としては、みんなが吸うから
たばこを吸うという現象が出ています。
最近、子どもと同居している二十代以下の父親の喫煙率は80%台であり、およそ三十年前の成人男性の
喫煙率です。十代の母親の喫煙率は40%を超えています。生殖細胞(精子や卵子)などの遺伝子に傷の付き
やすい年代に喫煙を始めた世代ですし、子どもを産む女性の喫煙率が、日本においてはかつて経験したこと
のない高率になっています。小児科医は、そのような状況で生まれた赤ちゃんの病気に直面します。
赤ちゃんに罪はないのに、長期間の入院を余儀なくされている場合も多いのです。
カイワレ大根の種子を、たばこの抽出物を含んだ水で育てると、発芽しない種子や発芽しても丈の低い細い
ものしかできません。胎児に置き換えてみるとはっきりわかると思います。流産・死産数が増加し、生まれて
くる赤ちゃんの身長・体重は減ってきています。
町中の自動販売機を見ると、自動販売機でたばこを買う客をレジから確認できる店は多くありません。
二〇〇八年度から全国で年齢識別装置を付けるそうですが、未成年者の喫煙対策は十分といえるでしょうか。
カードを入手できれば、誰でも買うことができるのです。対面販売を徹底し、大人の責任でたばこの害から
子どもを守る社会でなければならないと思います。
NPO法人こども医療ネットワーク会員 野田隆(のだ小児科医院)
2006年12月18日 南日本新聞掲載