灯油の誤飲
こども救急箱(161)
残暑の厳しい年でしたが、すぐに肌寒い季節になり、暖房器具の出番がやってきます。夏は
子どもの水の事故に注意しなければなりませんが、冬は石油ストーブやヒーターなどで使う灯
油の誤飲事故に注意しなければなりません。
灯油を誤飲する状況は、保管のためにペットボトルに移し替えた灯油を、飲み物と勘違いす
る場合や、灯油吸引用のポンプをなめたり、口に入れたりする場合があります。特に、灯油ポ
ンプは誤った操作で、大量の灯油を口に含んでしまう危険性があります。
万が一、灯油を誤飲してしまった場合は、少量でも医療機関を受診すべき、となっていま
す。灯油を口に含んでいれば口の中から臭いがするので、すぐ分かります。
誤飲していても、吐かせたり、水分摂取をさせたりしてはいけません。吐かせてはいけない
理由は、吐いた時に灯油が気道に入ると、わずかな量でも重篤な肺炎を引き起こす可能性
があるからです。また、気道内に入った直後は症状がなくても数時間してから症状が現れるこ
とがあります。
水分摂取により、吐き気が生じ、嘔吐を引き起こすこともあります。服や体に灯油が付着し
ている場合は、揮発する灯油の臭いで気分不良になることがあるため、服を着替えさせま
す。
子どもの誤飲は分別ある大人では考えにくいことですが、ハイハイで移動できるような赤ち
ゃんから、一人で歩けるようになり、自分でペットボトルを開けて飲めるようになった幼児まで
起こりうる事故です。
子どもの成長は喜ばしいことですが、ちょっとした大人の不注意で子どもを危険にさらしてし
まうことがあるので、周囲の大人が気を付けてあげることが必要です。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
吉重 道子(鹿屋医療センター小児科)