肺炎球菌ワクチン
こども救急箱(163)
ヒブ・肺炎球菌ワクチン接種により、子どもの重症細菌性感染症の数は大きく減少していま
す。鹿児島県では年間10人いたヒブ髄膜炎患者が今年は現時点でゼロ、肺炎球菌による
重症感染症の患者も全国的に半分になり、大変喜ばしいことです。
ただ、ヒブ髄膜炎に比べて、肺炎球菌感染症はなかなかゼロになりません。理由はワクチン
が効かないタイプの肺炎球菌が存在するからです。
11月1日から、定期接種の7価肺炎球菌ワクチン(PCV7)が、6タイプの成分を追加した1
3価(PCV13)に一斉に切り替えられました。PCV7に含まれないタイプの感染症が増えてい
たこともあり、今後、効果が期待されます。
米国をはじめいくつかの国では、PCV7を追加接種まで終えた5歳未満の子どもにも、補助
的にPCV13を1回だけ追加接種しています。
しかしわが国では、補助的追加接種は個人予防の観点から勧められるとしながらも、経済
的事情から定期接種とはなりませんでした。昨年の国の研究班のデータでは、乳幼児の重症
肺炎球菌感染症の45%は1歳半から4歳の間に起こっており、その約3分の1はPCV13で
なければ防げないタイプです。
鹿児島県では重症の肺炎球菌感染症患者が今年、既に9人出ており、PCV7の接種を終
えた子どもも安心はできません。PCV13の補助的追加接種の意義は大きく、市町村単位で
の公費助成が望まれます。
PCV13の安全性はPCV7と同じです。補助的追加接種は任意接種ですので費用がかかり
ますが、お子さんやお孫さんの健康を守る、見えないけれど大切なプレゼントとしてぜひご検
討ください。詳しくは、最寄りの医療機関まで。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
西 順一郎(鹿児島大学医歯学総合研究科微生物学分野)