マスクは守りに弱い−めりはりのある使い方を−

 

                                             子ども救急箱(166

 

インフルエンザの流行期に入りました。かぜやインフルエンザのウイルスは、感染した人の

唾液、鼻水、たんなどに含まれます。咳、くしゃみ、おしゃべりのときに口から出る小さな飛沫

(ひまつ)を、12メートルの距離で吸い込むことで感染します。

マスクは口から飛び出る飛沫をさえぎる効果があり、症状のある人が着用するのが本来の

使い方です。周りの人のために、おかしいなと思ったら早めにマスクをつけましょう。

 家庭用マスクには、不織布(ふしょくふ)製マスクとガーゼマスクがあります。不織布は繊維

(せんい)や糸を熱や化学的な作用で接着させたもの、ガーゼマスクは綿織物を重ね合わせ

たものです。飛沫をとらえる効果は、不織布製マスクが優れています。

 冬になると症状のある人だけでなく、症状のない人もマスクをつけている様子をよく目にしま

す。おそらくかぜやインフルエンザにならないように予防のために使用しているのだと思いま

す。でも、本当にマスクで予防できるでしょうか。

マスクと顔のあいだにはどうしてもすきまができます。大きな飛沫はマスクのフィルターにあ

る程度はさえぎられますが、小さな飛沫を含んだ空気はすきまから容易に吸い込まれてしま

います。実験で、マスクをつけた5人の顔にインフルエンザウイルスを噴霧したところ、5人と

も鼻の奥からウイルスが検出されたことが報告されています。

したがって、マスクをただ付けているから安心というわけにはいきません。咳や発熱などの

症状のある人に近づくときは、マスクをできるだけすきまがないようにつけることが大切です。

必要なときはしっかりとつける、必要でないときはつけないというめりはりのある使い方が望

まれます。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員

西 順一郎(鹿児島大学医歯学総合研究科微生物学分野)