医療情報の捉え方
こども救急箱(167)
毎年冬になると、ノロウイルスやインフルエンザウイルスによる感染症関連のニュースが多
くなり、今冬も盛んに報道されています。報道されるのは、集団発生などニュースとしての価
値が高まるときです。
報道では、研究者や医師が対策をコメントすることも多いと思います。中には「家族の誰か
が発症したら、接触しないように」との注意喚起や消毒の細かい手法が紹介されることもあり
ます。
これらは病院などの特別な場所では有効ですが、一般家庭、とりわけ子育て中の家庭では、
非現実的な内容だと感じませんか? スキンシップをとりながら、子育てをしている家族の間
で、感染を防ぐことは無理だと思います。
報道は限られた時間や字数で伝える関係上、最も重い症状を紹介し、対策も病院など特別
に弱い人がいる場合が想定されています。結果として、普段から健康に生活している人にも
恐ろしい病気と受け取られます。
注意喚起としては有効なのですが、過度に不安をあおられることにより、軽微な症状にもか
かわらず、込んでいる医療機関を受診し、そこで新たな感染症をもらうことさえあります。
ノロウイルスとインフルエンザウイルスは、予防接種や治療薬の有無などで違いはあります
が、ともに薬を飲まなければ治らない病気ではありません。予防接種がある場合は受けるべ
きですが、健康な人の大部分は、自然に治る病気です。
ニュースとして報道される医療情報は、すべての人に適切な情報だとは限りません。内容の
解釈には慎重になりたいものです。
過敏になりすぎないためにも、普段から気楽に相談でき、いろいろ教えてもらえる「かかり
つけ医」を持ってほしいと思います。
認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野 嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)