子どもの呼吸
こども救急箱(171)
小児科医が呼吸の荒い子どもを診察する場合には、口で息をしているか、鼻で息をしてい
るかに着目します。
呼吸数は心拍・血圧、体温とともにバイタルサイン(生命兆候)と呼ばれ、元気に生きている
証しとして重要なので、確認するのです。
乳児期は、おっぱいを飲みながら息をしなければなりませんので、鼻呼吸は上手にできま
すが、口呼吸はうまくできないため、鼻がつまるととても苦しくなります。
小さな赤ちゃんにとって怖い病気にRSウイルス感染症があります。肺の症状以外に鼻水が
とても多く出る病気です。それだけでも息苦しいですが、冬場に鼻水が固まるとさらに息がし
にくくなります。呼吸数とともに、授乳量が減っていないか、深く息ができているか注意しましょ
う。
幼児期になると、アデノイドという鼻の奥のリンパ組織が大きくなります。組織が大きくなり過
ぎると、鼻呼吸ができなくなりますので、いつも口をあけて口呼吸をします。
夜もよく眠れないため、夜尿の原因になり、集中力が落ちるなど、昼間の活動に影響が出る
ことがあります。このような場合には、耳鼻科や小児歯科の先生にも相談するようにします。
ところで、鼻呼吸を促すために、ずっとおしゃぶりを使っている子どもを時折見かけます。
病気のときの口呼吸は、鼻で息ができない場合に必要なものです。言葉をしゃべるときも、
口呼吸が必要です。人間は口呼吸が上手になったことで、ほかの動物と違って複雑な声を出
すことができるようになったのです。
病気がないのに口呼吸をしている子どもを私は見たことがありません。声が出せるようにな
ったら、おしゃぶりはやめるようにしましょう。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
楠生亮(国立病院機構南九州病院小児科)