赤ちゃんへの接し方

 

こども救急箱(172

「鈍感力」は元整形外科医である渡辺淳一氏のエッセイのタイトルですが、私はこの言葉が

気に入っています。

 小児科医は子どもの成長と発達を支援する職業なので、多くの子育て中のお母さんと話す

機会があります。お母さんの子育ては、個性や環境の違いによって千差万別ですが、共通事

項は初めての赤ちゃんへの過敏な対応ではないでしょうか。

 初めての出産で授かった赤ちゃんへの接し方をみていると、何か欠点はないか「あら探し」

の目で細かく観察している様子がうかがえます。目の大きさや形、お尻にできたポツポツ、泣

き方、飲み方、すべてに育児書に書いてあるような完ぺきを求めがちです。

 しかし、育児書に書いてあることや、助産師さんや保健師さんからのアドバイスは一般的な

ことが多く、個別の赤ちゃんへの対応はお母さん自身が見つけ出す必要があります。

 その大前提としてほしいのが、赤ちゃんも動物であるということです。母乳が欲しければ泣く

し、満足すれば眠ります。予定の「時間が来たから飲ませなくちゃ」と起こす必要はありませ

ん。

 2番目以降の赤ちゃんは、床に転がった哺乳瓶でもそのまま口に入れることもあるし、少々

の発疹や微熱に驚くこともなく、お母さん自身がずぶとくなってきます。

 どちらがいいのでしょうか。誰も正解を示すことはできませんが、ほどほどという日本的な表

現が最も適切だと感じます。鹿児島弁の「てげてげ」かもしれません。

 子どもは親の背中を見て育つというように、親の価値観や立ち居振る舞いの影響を強く受

けます。人はそれぞれの個性を養い、それぞれの魅力で社会を支えます。適切な鈍感力で

子育てをすることをお勧めします。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長

河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)