B型肝炎ワクチン
こども救急箱(175)
母から子へのB型肝炎ウイルス感染を防ぐ対策が30年ほど前から続けられてきましたが、
昨年から方法が少しだけ変更されました。HBs抗原陽性の母親から出生した子どもは、以前
は生後2カ月から行っていたHBワクチンを、原則生後12時間以内にHBグロブリンと一緒に
接種することになっています。
あんしん救急箱151でも取り上げましたが、HBワクチンは世界90カ国以上で生まれたら
すぐに全員に接種されています。日本でも出生直後から接種してよいワクチンになっていま
す。
過去30年間の対策で思うように感染者数を減らせず、今回の改定が実施されました。生ま
れてから6カ月までに5回受診しなければならなかった制度を、2回ですむように改定しまし
た。
このワクチンの特徴として、2000c未満で出生した赤ちゃんは4回以上の接種が必要であ
ること、1歳をすぎるとワクチンに対する反応が低下し、3歳を超えると接種効率が悪くなるこ
とが判明しています。
厚生労働省研究班の調査によりますと、子どもで感染が確認された患者さんの中で、母子
感染以外の感染(水平感染)が30%以上あることがわかりました。そのうちの半分がキャリア
である父親からの感染で、少数ながら保育園や家族以外からの感染も確認されていますの
で、誰にでも感染のリスクはあります。
子どもの時期に感染すると、高い確率でキャリアになり、将来の肝硬変や肝がんの原因に
もなります。元気な子ども全員に4カ月までに2回、1歳までに合計3回接種してあげてほしい
ワクチンです。
なお、私たち医療従事者は定期的に検査をし、必要な場合にはHBワクチンを複数回接種
して業務を行っています。
認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)