自宅浴室での溺死
-子どもの安全最優先に-
こども救急箱(181)
子どもの死亡原因の第一位は不慮の事故であることはよく知られていると思います。数が
多いのは夏の水難事故による溺死です。その多くは学童以上の年長児ですが、幼児が自
宅の浴室で溺死している事実は、子育て世代以外にはあまり知られておりません。
毎年全国で数十人の乳幼児が、主に自宅の浴室に転落して死亡しているといわれていま
す。小さな子どもは相対的に頭部が重く、のぞき込むような姿勢になると転落することは容易
に想像できます。たまたま浴室に入って浴槽をのぞき込んで転落した場合、10a程度の水
が残っていると溺れます。
各種の研究結果によると、洗い場から浴槽の縁の高さが50aあれば、2歳児までは転落し
ないとされています。実際には洗面器が近くにあれば踏み台になりますし、縁の高さが50a
以上の浴槽は少ないそうです。高齢者向けのバリアフリー化により、利用者が自分で選択し
ない場合には、浴槽の縁の高さは低くなる傾向にあります。
また、水を有効に使うエコ活動の影響で、前夜使ったお湯を捨てないで翌日の洗濯に利用
することも推進され、洗濯機には浴槽から水を供給するホースが標準装備されています。こ
の習慣は悪くないのですが、小さな子どもがいる家庭では入浴後にすぐ排水してほしいです
ね。1〜2年の短い期間です。
事故防止対策として、最近のユニットバスの扉には外側上部に鍵がついています。おとな
は浴室の鍵といえば、内側からの鍵しか考えませんので、実際に使用している人は少ないと
思います。
水がなければ溺死には至りませんので、子育て期間は浴槽の水に関するエコ意識はなくし、
子どもの安全を最優先にしたいものです。
認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)