先天歯

-長期にわたる管理必要-

 

                                              こども救急箱(182

「先天歯」とは、生まれたときに既に生えている歯、あるいは、生まれて1カ月以内に生えて

くる歯のことを言います。先天歯には、生後8カ月ごろに生えてくる乳歯が早期に生えてき

たものと、余分な歯が他の乳歯より早く生えてきたものの2種類があります。余分な歯の場

合は抜歯しますが、乳歯であれば、できるだけ抜かずに残存します。

 ほとんどは早期に生えてきた乳歯であり、「鬼歯」や「魔歯」とも呼ばれています。生えてくる

場所は下の前歯が多く、授乳するときにお母さんの乳首を傷つけたり、赤ちゃんの舌の下に

傷ができたりします。この場合、生えている歯の先端がとがっており、歯科医院で丸く磨いて

あげることで症状は緩和します。

 先天歯は多くの場合、白くきれいな歯ではなく、歯の構造が不完全で、茶色がかった色をし

ていたり、ざらざらして表面のエナメル質が薄くもろかったりします。残せたとしても、しっかり

管理を行わないと虫歯になりやすいという特徴があります。根っこが未完成で短く、しっかりし

ていないためグラグラゆれることがあり、何かの衝撃で抜けてしまう恐れがあります。

 生後間もない乳児は、抜けてしまった歯を誤って飲み込み、窒息する危険性があります。そ

のため、やむを得ず抜歯する場合も少なくありません。抜歯後に乳歯が再び生えてくることは

ありませんが、エックス線写真で歯ぐきの中に永久歯の芽が確認できれば、生えてきます。永

久歯が生えてくるまでは隣の歯が倒れたり、寄ってきたりしないように、すき間を保つ処置をし

ます。

 先天歯は長期にわたる管理が必要となりますので、かかりつけ歯科医で、しっかり診てもら

うことが重要です。

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員

橋口 真紀子(鹿児島大学病院小児歯科)