小学生のアレルギー疾患の変化

 

こども救急箱(187

 日本では1960年代以降、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー

性結膜炎、スギ花粉症などの子どものアレルギー疾患は、一貫して増加傾向にあるといわれ

ています。鹿児島県ではどうなのでしょうか。

九州各県と山口、兵庫の各県のおよそ35万人の小学生を対象に同じ内容のアンケート

用紙を用いて、1982年から10年ごとに4回行った疫学調査があります。それによると、アレル

ギー疾患と診断された小学生の比率は増加の一途をたどっています。しかし、すべての疾患

が増加しているわけではありません。

気管支喘息は2002年以降減少に転じ、アトピー性皮膚炎は1992年以降減少し続けてい

ます。一方、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、スギ花粉症は現在も増加し続けてい

ます。鹿児島県の小学生においても同様の傾向がみられています。

気管支喘息発作で入院する子どもは、20年前に比べると激減しています。これは、ロイコト

リエン受容体拮抗薬や吸入ステロイド療法などの新しい予防的治療が普及したためと考えら

れています。このことが気管支喘息の子どもが減少した要因のひとつと考えられます。また、

アトピー性皮膚炎と診断される子どもの率の減少は、日常的なスキンケアの重要性が浸透し、

食物アレルギーの適切な診断と治療、およびステロイド外用剤による適切な治療で症状がコ

ントロールしやすくなったことによる考えられています。

 アレルギー疾患の原因や症状についての研究はかなり進んできており、それに対する治療

方法も進歩してきました。アレルギー体質そのものを変えることは難しいですが、症状はかな

りコントロールできるようになりました。アレルギー疾患はいまだ増加しつつあるとはいえ、あ

まり不安にかられる必要はなさそうです。

 

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員

中村亨(総合病院鹿児島生協病院小児科)