お母さんの飲酒とこどもへの影響
こども救急箱(190)
前回、こどもの急性アルコール中毒の話をしました。今回はお母さんの飲酒とこどもへの影
響についてお話したいと思います。
まずは妊娠中ですが、胎児アルコール症候群の原因となりえますので、普通は禁酒するこ
とが指導されます。缶ビール1本ほど(ワインだとグラス1杯、日本酒・焼酎だと半合、ウイスキ
ーやブランデーは40ml)を時折、ゆっくりと飲む程度であれば影響は少ないという報告もあり
ますが、1日に缶ビール6本以上飲むような大量摂取では、1〜2回であっても胎児に大きな影
響が出ます。妊娠する可能性があれば、生理開始後1週間程度に飲酒を限るなど、飲む量、
機会を調整することで影響を少なくすることができます。
次に授乳中ですが、母乳は血液から作られるので、飲酒後30〜60分で母乳からアルコール
が検出されます。しかし、1日に缶ビール1本ほどであれば、母乳中の濃度は0.004%以下で
す。前回のアルコールの誤飲誤食の濃度と比べて非常に低い値です。この値では赤ちゃん
に大きな影響を与えないといわれていますが、もしお母さんが飲酒した場合には2時間以内
の分は搾乳して与えずに、その後に授乳することを勧めます。一部にビールを飲むと母乳の
出がよくなると言う方もいるそうですが、勢いが良くなるだけで量は増えないようです。
このように妊娠中授乳中のお母さんの大量飲酒や習慣的な飲酒は好ましくありません。し
かし、お酒を飲むのが好きで禁酒がストレスになる場合には、時々の少量飲酒に問題はない
ようです。育児は絶対にこうでなければいけないということはありません。自分のペースで子
育てを楽しめる環境をつくりだしましょう。お母さんのストレスが少なく子育てできるのが、こど
もには一番良い影響を与えます。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
根路銘安仁(鹿児島大学病院小児科)