インフルエンザ脳症
−ワクチン接種 予防の鍵−
こども救急箱(191)
乳幼児がインフルエンザにかかったとき、最も重症な病型としてインフルエンザ脳症が知ら
れています。意識障害や異常行動、さらには呼吸停止になることもあります。インフルエンザ
を発症し、病原体が脳内まで侵入して脳症になると考えがちですが、実際はそうではありませ
ん。
どのような人が発症しやすいか、なぜ脳症になるのかなどの詳細は解明されていません。
ほとんどの場合は発症から数時間以内に神経症状が出ますが、脳内からウイルスが検出さ
れたことはありません。インフルエンザがこじれた結果ではなく、初めからインフルエンザ脳症
として発症すると考えた方がよいと思います。つまり、インフルエンザの診断を受けて薬を飲
み始めるころには脳症は進行しているので、薬では予防できないと考えてよいと思います。
したがって、予防策はワクチン接種しかないということになります。今年のように、秋にワク
チンを接種していても、多くの子どもがインフルエンザを発症している状況では、接種をしても
しなくても一緒ではないか、と感じられるかもしれませんが、小児科医にはそう思えません。接
種率が高くなって、インフルエンザ脳症の子どもは明らかに減少しているからです。全国の小
児科医は、ワクチンが乳幼児患者の重症化を防いでいると実感しています。
乳幼児は普通の発熱だけで熱性けいれんを発症するし、熱だけでちょっとした意識障害や
異常行動(せん妄)を起こしやすいので、インフルエンザ脳症かどうかの診断は簡単ではあり
ません。脳症の場合には症状が持続するといわれています。
インフルエンザ脳症を予防できる方法はワクチンしかないと考え、毎年ワクチンを継続して
接種することが重要です。
認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野 嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)