イオン(スポーツ)飲料の取り方
−病気が改善すれば不要−
こども救急箱(193)
イオン(スポーツ)飲料は電解質や水分、栄養補給を目的に広く飲まれています。他の清涼
飲料水に比べても糖分濃度が高く甘みが強いため、子どもたちに飲む習慣がつきやすいとい
われています。イオン飲料は酸性のため、歯のエナメル質を溶かす作用があり、虫歯になり
やすくすることが分かっています。
また、糖分の取りすぎによって肥満の原因にもなります。たくさん飲んで血糖が高くなると喉
が渇き、さらに多く飲んで、糖尿病状態で意識がなくなったことも報告されています。
これに加え、イオン飲料の習慣的摂取によるビタミンB1不足が原因の脳障害が報告される
ようになりました。1歳前後の子どもたちがイオン飲料だけを摂取するためビタミンB1不足に
陥り、脳に障害が出たり、死亡したりする場合があるようです。ビタミンB1不足は「かっけ」の
原因です。薩摩藩出身で旧日本海軍の軍医・高木兼寛が、米だけ食べることで発症すること
を証明したことは有名です。
子どもがイオン飲料を飲み始めるきっかけは、風邪や嘔吐(おうと)下痢などの病気のとき
に、医療者が「(薄めて)飲ませるように」と勧めたことが多いようです。病気が治ってもイオン
飲料を好んで飲み、水や食事をあまり取らなくなることがあります。
イオン飲料は健康によいと思われているため、子どもが好んで飲むことに抵抗を持つ親は
少ないと思います。しかし、これは誤解です。イオン飲料は病気が改善すれば必要ありませ
ん。
イオン飲料の飲み過ぎは、虫歯、肥満、ビタミンB1不足による脳障害の原因になりえるので、
病気が治ったらイオン飲料は中止するか、少なくとも習慣的に飲むことはやめましょう。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
根路銘安仁(鹿児大学病院小児科)