子育て中の保護者へ
−ハンドルの「遊び」必要−
こども救急箱(196)
長期入院をしている車好きの男児が、紙で作った車のハンドルを自分で持って操作のまね
をしていました。時にはバックや転回もして、病院の廊下を上手に歩いています。その所作の
中に、適切な「遊び」があったので感心しました。
国語辞典で「遊び」を引くと、四つ目くらいに「気持ちのゆとり」とあります。次に、機械の連結
部分に少しゆとりがあること、つまり「ハンドルの遊び」のことも載っています。
もし車のハンドルに遊びがなければ、とんでもないことになりますよね。レーシングカーのハ
ンドルには遊びがないので、高速走行と相まって、事故は常に大事故になります。
子育て中の保護者には、特にこの「遊び」が重要ではないでしょうか。
慌ただしい毎日の中で、わが子にしつけとして教える時も、悩みの相談に乗る時も、保護者
を始めとした周囲の大人に「遊び」があることが、子どもたちの成長によい影響を与えるように
感じます。
3歳ではこれができなければならない、中学生ならこうあるべきだ、と押し付けられると子ど
もたちは楽しめません。
子どもたちを見ていると、自分の決めた狭い道を「遊び」のないハンドルを操作して進んでい
る場合がよくあります。並走する大人のハンドルに同じように「遊び」がなければ、すぐに大事
故につながってしまいます。周囲の大人は十分な「遊び」があるハンドルで、広い道を運転し
たいものですね。
限られた空間の病棟で過ごしながら、「遊び」があるハンドルさばきで、上手に遊べる幼児は
天才だと思いました。私たち大人が彼らのためにできることは、「遊び」を持って接することで
はないでしょうか。
認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野 嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)