食物アレルギー
-血液検査に頼らず-
こども救急箱(198)
小児科の外来に、「アレルギーの検査をしてほしい」と子どもを連れて行くお母さんは多いと
思います。そんなお母さんの期待は、食べてよいものと避けるべき食物を血液検査で見分け
てほしいというものです。
保育所、幼稚園や小学校に生活管理指導表(食物アレルギー)が導入され、日本でも日常
生活の中で食物アレルギーがクローズアップされています。乳児で約10%、学童以降でも1・
3〜4・5%の子どもが、食物アレルギーに悩まされていると推計されていますので、かなりの
人数だと思います。
食物アレルギーが疑われる場合には、アレルギーの素因を確認するためや、貧血や肝機
能異常の有無を確認するために血液検査は必要です。しかし、血液検査で食物アレルギー
の診断や原因食物の確定はできません。血液中の抗原特異的IgE(例えば卵白や小麦に対
するIgE)が検査で陽性であっても、食物アレルギーの診断にはならないし、それを避けるべ
きという結論にはなりません。診断には食物負荷試験が必要になります。
栄養を取らなければならない成長期の子どもに、「念のため」「心配だから」と食べさせない
よりも、まずは正確な診断をつけてもらうことが重要です。そのためには、疑われる食物、食
べたときの状況と時間経過、乳児期の栄養方法、食習慣、環境、家族歴など、お母さんから
もたらされる多くの情報が必要です。血液検査よりもお母さんの勘と観察力ですね。
妊娠中、授乳中に子どもの食物アレルギー発症予防のために、お母さんが食物制限をした
り、離乳食開始を遅らせたりするのも、現在では根拠に乏しく勧められていません。アレルギ
ー関係の学会や研究会のホームページも参照してください。
認定NPO法人こども医療ネットワーク理事長
河野 嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)