色覚検査

 

こども救急箱(199

光の3原色は光を感じる目の細胞が3種類あることから生じていますが、その3種類の細

胞には個人差があるため、色の見え方も誰一人同じではありません。その3種類の細胞のう

ち、ある種類が無かったり、2種類が似た色を感じたりすることで見え方の異なる人がいます。

日本人では男性で20人に1人、女性では100人に1人とかなりの割合でいます。

以前はこれらを判別するために学校で色覚検査を行っていましたが、学校保健法の改正

で必須ではなくなったのを境に平成15年以降はほとんど実施されていません。検査で異常が

あると差別につながると誤解されたためと思われます。そのため、教職員をはじめとして社会

全体が色覚についての関心が薄れてしまい、色覚が異なるこども達が不利益をこうむることが

生じてきています。

具体的には、小学生では「黒板の赤いチョークでかかれて文字を読み飛ばして怒られた」、

「色間違いをして、先生に怒られたり、級友にからかわれたりした」、高校生になると「一部の

就職に際し色覚異常を指摘されて困惑した」などがあります。また、日常生活では肉の焼け

方が良く焼けているのかが判別しにくいなどがあります。これらのトラブルは、事前に本人な

らびに保護者が見え方の特性を知っていれば避けることができますし、社会的に多くの人々

が色覚についての理解が深まれば、区別しにくい色を用いないなどバリアフリーが進むと考

えられます。また、色認識を助ける眼鏡も開発されてきています。

色覚検査で色覚異常を診断することが差別につながると考えるのではなく、色の見え方に

も個性があることを理解し、見えにくい人が困らないようにサポートできる社会体制を作ること

が必要です。

 

 

認定NPO法人こども医療ネットワーク会員

根路銘安仁(鹿児大学病院小児科)