先天性股関節脱臼
-ベビースリングは正しく使いましょう-
こども救急箱(200)
ベビースリングは抱っこしていても両手が使えるため、家事をするときにも外出したときにも
便利です。正しく用いないと落下あるいは窒息の危険があるということは報道されています。
しかし、間違った使用法で「先天性股関節脱臼」という病気を誘発することは知られていない
と思います。
「先天性」というと生まれつきの問題で、ベビースリングの使用と関係ないように聞こえますが、
この病気は生まれた後の状態によっても発症することが分かってきて、現在では「発育性股
関節形成不全」という病名に変わってきています。
乳児期の子どもは、カエルのように足を曲げ広げてよく動かすことで、歩くために必要なしっ
かりとした股関節を育てます。生後3〜4か月位までに、足を伸ばした状態で外から力がかか
ると、痛みを伴わず脱臼することがあります。脱臼した状態が続くと股関節の形成が妨げら
れ、1歳を過ぎて歩くことができるようになっても、不安定な歩き方になることや、将来の「変形性
股関節症」の原因になることが知られています。
股関節が外れやすい生後3〜4か月までにベビースリングを使用する場合には、俗に「コア
ラ抱っこ」と言われる股関節を開いて曲げた状態での使用することに注意してください。横抱
きや包むようにして足を延ばした状態にすると、股関節は動きが妨げられて脱臼しやくなりま
す。知らない間に股関節が外れることで股関節の形成が妨げられることあるのです。
もし脱臼したとしても、早く診断して治療すると比較的容易に治りますが、気がつくのが遅れ
ると手術が必要となったり、手術しても後遺症が出やすくなったりします。
かわいい赤ちゃんをベビースリングで抱っこする前に、正しい使い方をしっかり確認してみま
しょう。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
根路銘 安仁(鹿児大学病院小児科)