歯ブラシによる事故に注意
こども救急箱(201)
小児期の死亡原因の第1位は、病気ではなく不慮の事故です。その点では、子育て中にも
っとも重要なことは事故防止だと言えると思います。事故にはいろいろありますが、身近なこ
とから注意する習慣をつける必要があります。
鹿児島市立病院救命救急センターにこのところ2〜3か月に一人の頻度で、乳幼児の歯ブ
ラシによる事故による受診が続いています。消費者庁の報告を見ますと、平成22年から2年
ちょっとで50件の報告があり、そのほとんど(49件)が6歳未満です。これは氷山の一角で、
実際はもっと多いと思います。
歯ブラシをくわえたままで転んでしまい、口の中に歯ブラシがつきささったことが原因です。
歯ブラシを加え歩いたり、椅子から落ちたり、状況はさまざまですが、一瞬のことですので、こ
とが起こり始めてからでは対応できません。予防が重要です。
当院ではのどのまわりにある血管を傷つけたり、脳まで突き刺さった子どもはいませんでし
たが、命の危険と隣り合わせの重大事故だと思います。
けがの重症度だけの問題ではなく、傷口から口の中にたくさんいる細菌が侵入することによ
る高熱や、傷口周辺の腫れで食べ物が通らなくなり、お腹がすいてもごはんが食べられなくな
る可能性があります。全身麻酔をかけて、歯科口腔外科の先生に歯ブラシを取り除いてもら
い、小児科で点滴・抗菌薬の治療を行、幸いなことに全員無事に退院できました。
虫歯予防にはみがきの習慣はとても大事なことですが、歯ブラシを一人で持たせる時は、
おとなと一緒に行うようにしましょう。特に立っている子どもが歯ブラシをくわえていたら、かな
らずやめさせてください。またこどもはまわりを見てまねをします。周りの人も歯ブラシをくわえ
たままで歩かないように注意しましょう。
認定NPO法人こども医療ネットワーク会員
楠生 亮(鹿児島市立病院小児科)