ベランダからの転落事故
こども救急箱(204)
幼児がベランダから転落する事故の報道が相次いでいます。子どもの死亡原因の第1位が
「不慮の事故」であることはよく知られています。事故死の主因であった交通事故死は近年確
実に減少していますが、この夏休みの海や川での死亡事故の報道のように水難事故は毎年
のことです。幼児では家庭内の浴槽での溺水もありましたが、最近は啓発活動によって減少
傾向にあるようです。
そのような状況でベランダや窓からの転落事故は増加しています。東京都では最近5年間
で150件以上発生したと報告されました。高層マンションが多い都会の現象だけではなく、ベ
ランダがある建物であれば地方都市でも同じです。
窓や扉を開けっ放しにする夏場に多く、ベランダにいろいろなものを置くことが原因になって
います。とりわけ、エアコンの室外機やクルマのおもちゃなどを踏み台にし、4歳以下の幼児
が乗り越えることが多いと言われています。
ある調査によると、都市部のマンションではベランダを有効活用したいという希望が多く、ガ
ーデニングや日光浴に利用されています。しかし、幼児がいる家庭ではベランダに物は置か
ないことと、室外機は壁に取り付けることが勧められています。それを踏み台にした転落事故
の原因になります。
建築基準法でベランダの手すりの高さは1.1m以上と規定されていますが、幼児の安全のた
めには注意が必要です。ベランダの手すりを高く改装することも効果があると思いますが、各
家庭でご両親が危険を予測し、ベランダにものを置かないように注意する方が遥かに効果的
です。
転落事故は死亡事故になります。周囲のおとなの責任で、社会の宝である子ども達をみん
なで守りましょう。
認定NPO法人こども医療ネットワーク
理事長 河野 嘉文
(鹿児島大学病院小児医療センター)